「i-新聞記者ドキュメント-」と「さよならテレビ」
オススメの映画を2本、ご紹介します。
「i-新聞記者ドキュメント-」
森達也、怒りのエンタメドキュメンタリー。
「観た人に委ねます」それが、森達也の常套句です。
珍しくラストに森監督のナレーションが入ります。
なぜ入れたのか、本当の理由は分かりません。
[i]は、望月衣塑子の名前の頭文字[i]であり、一人称単数の[i]でもあります。
森達也も[i]=一人として、最後に言葉を発したのだろうか。
それとも、はっきりと言葉にしなければ伝わらないところまで
日本社会は来てしまったということだろうか。
または、言葉にしてしまうほど怒りを感じているのだろうか。
メディアと社会と政治は合わせ鏡です。
私たちにも向けられた「怒り」全てに対する「怒り」を
ぜひ劇場で感じてもらいたいと思います。
森達也の作品は進化し続けていて、
エンターテイメント性の強い今回の作品は
森達也作品初心者でも2時間苦痛なく楽しめると思います。
ラストシーンで、
カメラを見つめる望月記者、
MARTINの感情を揺さぶりかける音楽、
そして、監督自身が書いた[i]の題字に重なった時、
感動か、怒りか、体の底から湧き上がる感情に興奮して、鳥肌が立ちました。
そんな映画に出会えることは滅多にありません。
ぜひ観てほしい1本です。
なんて、ちょっとカッコつけたこと言いましたが、
昨日、性暴力被害を訴えた民事訴訟で勝訴した伊藤詩織さん、
森友学園問題の籠池夫妻、菅官房長官や前川喜平氏など
ここ数年よくメディアで目にした人物や
森達也好きなら、ご存知の方も多いであろう
神保哲生氏、金平茂紀氏なども登場し、
色んな人が出てくる度に「この人も出てるの!?」と
ちょっとした野球のオールスター戦を見ているようで
ワクワク・ニヤニヤしながら見れる映画です。
よく映画館で寝てしまう私の旦那も
森達也の作品を見るのは初めてで、難しい話には興味を示さないタイプですが
「面白かった」とずっと起きて観ていたので
誰でも楽しめる映画なのかなと、思いました。
そして、2本目の
「さよならテレビ」
「東海テレビドキュメンタリー劇場」シリーズの第12弾作品として
昨年9月に開局60周年記念番組として東海地方限定で放送された
『さよならテレビ』に新たなシーンを加え、110分の映画として
2020年1月初めから全国で公開されます。
先日、「地方の時代」映像祭で、たまたまテレビ版を見る機会がありました。
テレビ制作の裏事情が映し出されて云々…というよりは、
業界人にフォーカスし、彼ら苦悩や焦り、葛藤、喜怒哀楽がしっかりと描かれており
尻尾の先まであんが詰まったたい焼きのような映画です。
ただし、ドキュメンタリーとは決して”リアル”ではありません。
これは、森達也もよく言っていることですが
ドキュメンタリーというのは、主観の産物です。
この映画の中でも、
「ドキュメンタリーは現実ですか?」
「カメラがあるという状況が現実ですか?」
と、ディレクターが監督に問いかけるシーンがあります。
それが、この作品の重要なキーワードになっている気がしますので、
その点にも注目していただければと思います!
今日ご紹介をした2本は、ぜひ合わせて見ていただけたら
どちらの作品も倍楽しめるのではないかなと思います!
ご興味のある方は、少しだけ、メディアセンター横の
ラックにフライヤーを置いてますので、
ご自由にお持ち帰りください。
「i-新聞記者ドキュメント-」は
現在、京都シネマや第七芸術劇場等で上映中。
「さよならテレビ」は
京都シネマや第七芸術劇場等にて、2020年1月4日から公開です!
(txt:ゆり)