フォーレの「レクイエム」
フォーレという作曲家をご存知だろうか。
ドビュッシーやサン=サーンスなどと同時代を生きた
フランスの作曲家である(生まれはベルギー)。
この作曲家の名を初めて聞く人もいるだろうし、
ましてやその作曲した曲を耳にされたことがない人も
少なくないかもしれない。
かく言うわたしも実はこの曲しか知らないのだが、
彼の代表作に「レクイエム」作品48がある。
「レクイエム」のタイトルを持つ曲は、モーツァルトやブラームス
などの大作曲家たちも手がけているが、このフォーレのものは
包み込むような、そこはかとない慈悲深さをしみじみと感じさせてくれる
逸品である。
「レクイエム」は、死者を悼むためのものではあるが、そうした意味合いは
別として、心が疲れたなあと思った時、この曲は聴く者に慰めや癒しを与え、
仄かな灯りをともしてくれることであろう。
あれほど神がかり的で優美な旋律を生み出したモーツァルトも、
晩年に作曲したレクイエムでは、叫びを思わせる曲が挿入されているが、
フォーレはあくまでも静謐で厳か、そして優しい。
こんな曲を聴ける時代に生を授けられたことを私は幸せだと思っている。
(text:Bach憧憬)