グスタフ・マーラーの音楽
今年はマーラー没後100年に当たる。
マーラーの曲はやたらと長い。
交響曲第3番、7番などは2時間程度を要する。
余程のマーレリアン(マーラーファン)でもない限り、
集中して聴き通すのは骨がおれようというものである。
だからモーツアルトやベートーヴェンといったメジャーな
作曲家のような人気はない。
しかも、彼ら正統的古典派のように曲が整然としていない。
しかし、マーラーの曲に一度はまるとなかなか抜けられない
危険性を秘めている。
その魅力はどこにあるのだろう。
私の卑見に過ぎないが、彼の曲は悲しみ、悩み、喜びといった感情の
起伏をそのままを楽譜に認めたような印象さえ与えるが、そこに我々が
共感し、さらには聴く者と作曲家が同じ立ち位置で一体化する感情を
抱かせるせいではないかと私は考えている。
今はなき指揮者クラウス・テンシュテットは「わが身とひきかえをする
覚悟がなければ、マーラーを指揮することなどできない」と語ったというが、
彼が病身をおして1990年にシカゴ交響楽団を指揮した交響曲第1番のDVDを
観て、そのことを確信した。
(text:Bach憧憬)