源氏物語の時代

私たちが生きているのは現代なので、例えば、「夜」といえば私たちの知っている夜しか想像できないと思うのです。人々が怨霊や物の怪を本気で信じ、恐れていた、その夜の暗闇はどのようなものだったのだろう…。想像したことはありますか?

「平安時代」といって、私たちはその長い髪や十二単を思うけれども、そのきらびやかな姿はテレビドラマで見たものですよね。そこにいる人々の顔は現代人で、現代の化粧をしている。眉毛もあるし。私たちは自覚することもないままに現代の感覚を当てはめてその時代を思っているのです。

では実際は…?

お風呂にほとんど入れず、入ると言っても蒸し風呂で、現代のように湯船につかるわけではないから、垢まみれ。体臭が気になるので香をたきしめる。そしてまり箱。どんな香りだったのでしょうか…。昼でも薄暗い部屋の中に浮き上がる白塗りの顔は栄養失調でむくんでいる。眉毛は全て抜かれ、額の近くに薄く引かれている。紅はひかず、お歯黒をつけ、そのお面のような顔を長い黒い髪が縁取り、鮮やかな十二単が彩る。

どう考えても異様でしょう。その空気、空間はどんなだっただろうと想像してみると、私は、これまでの華やかなイメージは消えて、儚さが濃く浮き上がってきました。

そういう世界観をふまえた上で源氏物語を読むと、これまでとはまた違った趣で楽しむことができますよ。現代とは全く違う世界にいながら、誰かを思ったり悩んだりする登場人物が「私と同じじゃないか!」と思えるのも、なんとも不思議な気持ちです。

『暮らしの歴史散歩生き生き平安京』
藤川桂介著
情報館所蔵:3F閲覧室 一般図書 210.36‖F 58

(text:meganet)

    fromKYOTO

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