天才バレリスト ニジンスキーについて

ニジンスキーは空中で静止した?!

『Icon : 伝説のバレエ・ダンサー、ニジンスキー妖像 』
芳賀直子編・著・監修 講談社
3F閲覧室 一般図書 769N73

バレエはまだ観たことがない。ましてや私が生れる前に亡くなっていた
ニジンスキーの生前の姿を知るはずもない。
残された映像はなく、舞台上での活躍ぶりは写真で想像するしかない。

ニジンスキーは、1909年にパリのシャトレ座で旗揚げされた『バレエ・リュス』
というロシア・バレエ団のスターバレリストであった。
このバレエ団はパリを中心として活動し、今日のモダンバレエの基礎を築いたそうだ。

さて演技するニジンスキーの写真を見て奇異に感じるのは、
演じる役柄によってまったく顔が異なっており、到底同一人物には見えないことだ。
衣装やメーキャップが違うのはもちろんだが、例えば日本の二枚目の役者が
役柄によっては三枚目風に演じることはあるだろうが、それでも別の役者と見間違う
ことは先ず考えられない。
しかし、ニジンスキーは明らかに別の人間にしか見えない、
それだけその役に徹していたということだろう。
山岸凉子さんの『牧神の午後』というコミックで、「あれはまさしく憑依だ」と、
作中人物に言わしめるシーンがある。
役に徹しきった結果、役上の人物がニジンスキーに憑依し、もはや彼ではなくなってしまう、天才の演技力はそんな領域にまで達してしまうものなのか。

また舞台上で高く跳躍しながら両脚を打ち続ける「アントルシャ・ディス」の
ポーズが、ニジンスキーの場合まるで空中に静止したように見えたそうだ。
いくら天才とはいえ、神ではないのだから観客にはそう観えた、ということに違いないが、まさにそうした神技のできる稀有なバレリストであったのであろう。

天才がその才能ゆえに生涯幸せであったというケースが稀であったように、
ニジンスキーもその後精神衰弱に陥ったために舞台を離れざるをえなくなり、
バレリストとして復活することなく、1950年にロンドンで生涯を閉じた。
その墓地はパリの芸術街モンマルトルにあるそうだ。

(text:bach憧憬)

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