『ローズ』
古い映画ですが、from KYOTO 2008/5/16でジャニス・ジョプリンが紹介されていたので―。
1979年公開。酒とドラッグに溺れ、27歳という若さでこの世を去ったジャニス・ジョプリンをモデルに、“ローズ”という名の女性シンガーの壮絶な人生を描いた音楽映画。大スターの光と影、その栄光が輝かしいほど、影の部分は切なさと悲しさを増す。ありがちなテーマにもかかわらず、映画史上に残る名作となりえたのには、主役を演じたベット・ミドラーという稀有なシンガーの存在が大きい。ジャニスがモデルだからといって“ジャニス”を演じたのではなく、“ローズ”を演じたベット。モノマネではない、彼女のパフォーマンスがこの映画をより感動的なものに仕上げてくれている。
ベット・ミドラーにとってはこの作品が初主演作であり、出世作。グラミー賞も受賞し、歌手としてはすでに成功をおさめていたかにみえる彼女だが、大きなシングル・ヒットには恵まれていなかった。しかし、いまではスタンダードともいえる主題歌『The Rose』が世界的大ヒット、女優としてもゴールデングローブをはじめ数々の映画賞を受賞し、一躍スターダムへとのし上がる。その後は音楽、映画、舞台とマルチな活動をみせ、アメリカを代表するエンタテイナーとして現在もなお活躍中だ。また、グラミー賞、エミー賞、ゴールデングローブ賞と各分野の最高峰といえる賞を受賞している数少ないアーティストのひとりでもある(アカデミー賞は二度のノミネート)。
アーティストの人生を描いた音楽映画は数多くあるが、俳優ではなくアーティストが主役を演じるということはあまりない。しかし、一流アーティストが別の一流アーティストを演じると、『ドリーム・ガール』でビヨンセがダイアナ・ロスを演じて高評価を得たように、単純に×2ではない相乗効果を発揮する。ビヨンセとダイアナ・ロスという同ジャンルの流れの中にある二人の組み合わせは当たり前に素晴らしかったが、全く異質の存在といえるジャニス・ジョプリンとベット・ミドラーという類稀な個性の融合はまさに奇跡!公開から30年が経とうとする現代でも色褪せないコーティング仕様された、ロックファンにも映画ファンにも愛される名作を生み出すこととなった。