『屋久島の森のすがた : 「生命の島」の森林生態学』
屋久島の森林生態系をわかりやすく解説。
1993年、日本初の世界自然遺産となった屋久島。小さな島の中で亜寒帯から亜熱帯までの気候、日本の植物種の7割以上が見られるほか、ヤクザルやヤクシカといった固有の野生動物も生息している自然の宝庫だ。その中でも、樹齢数千年の縄文杉、九州最高峰の宮之浦岳などが人気の観光スポットとなっている・・・。
世界遺産登録後、屋久島を訪れる観光客は年々増加している。観光客のマナーについてはマスコミでも度々報じられているので、一度は聞いたことがあるだろう。しかし、マナーを守っていても、多くの人々がそこに足を踏み入れるという行為自体が、自然にとってはインパクトとなりえるのだ。特にこれまであまり人が出入りしていなかった原生林にとって、それがどれほどのものか、考えるだけでぞっとする。
日本に限らず、ある時期からエコツアーというものが流行りとなっている。かくいう私もそういったツアーに参加し、熱帯雨林などを散策した経験があるのだが、安易な参加は決して褒められたことではない。それは、エコツーリズムの精神に則った本来のエコツアーではなく、利潤だけを追求した“偽エコツアー”が少なからず存在するからだ。本当にその自然を大切に思うなら、レンジャーやガイドの同伴・入場制限といったインパクトを軽減するために設けられたルールの有無、生態系の特徴など、ある程度の基礎知識を事前に学習してから訪れるべきで、それは、そこに暮らす動植物や人々に対する最低限の礼儀だと思う。そして、人々によって自然が痛めつけられていると感じたときには、訪問をあきらめるという我慢も必要だろう。
旅先のことを下調べしてから旅に出る。それは旅の安全と楽しく過ごすための基本だが、その目的地が自然であるとき、旅行ガイドから得られる情報だけでは少なすぎる。その土地の入門書的書物を一冊くらいは読んでおいたほうがいい。そうすればきっと、単に「きれい」とか「すごい」とかいう表層だけを捉えた感想だけではなく、より充実した時間と感動を得られるだろう。
屋久島の生態系、保全活動などをわかりやすい文章で紹介
『屋久島の森のすがた : 「生命の島」の森林生態学』
金谷整一 吉丸博志編
文一総合出版 2007.7
情報館所蔵:3F一般書 652.197||Ka 54