「嗚呼、ジャニス!」
かつてジャニス・ジョプリンという女性ロック・シンガーがいたことは老若を問わず、多くの人が知っていることだろう。
そこそこ長く生きてきた割には、わたしは彼女の多くを知る人間ではない。
言い訳ではないが、わたしがジョプリンを知ったときには、彼女はとっくにこの世からいなくなっていた。
彼女が1970年10月に27歳で死んだ時には、わたしはまだ高1で、しかもロックに興味を持つ若者でもなかった。いまも好んで聴く方じゃない。
わたしが彼女を初めて聴いたのは22歳の時、彼女の死後7年が経っていた。
“サマータイム”
なんて哀しい曲だ!なんとせつない声だ!!
あんたはどんな生き方をしてきた女性なんだ???
こころがふるえた。泣けた。
全身を曲に同化させなきゃ、とてもこんな声出せるもんじゃない。
こんな凄いミュージシャンがもうこの世に存在しないことが悲しかった。
自ら命を縮めてしまったとしか思えない生き方には、とても賛同ができないが、今も彼女の何を知っているわけでもないわたしは多くを語れない。
だけど“サマータイム”をこれほど印象強く、ひとのこころに焼き付けてしまううたい方のできるミュージシャンはそうざらに現れるものではない、とだけは確信を持って言える。
(text:bach憧憬)