マリー・アントワネット
お砂糖とクリームにつつまれて
マリー・アントワネットの愛らしさを「ケーキみたい!」と例えるシーンがあったけれど、その言葉はこの映画にこそ当てはまる。背景も衣装も、全てをクリームで薄めたような甘いパステルの色の洪水。彼女に関しては数多の説があるけれど、ソフィア・コッポラのこの映画はひたすら女の子目線。乙女系映画を語るときにははずせない『ヴァージン・スーサイズ』の監督ならではの伝記映画だ。
宮廷での人間関係や世継問題など誰もが知るエピソードは勿論出てくるが、この映画では悲壮感は感じられない。どんな場面でもひたすらキュートで愛らしいこの女性は、ただの女の子にしか見えない。ぜいたくに明け暮れても、夫以外の男と恋に落ちても、ふわふわと女の子であり続ける彼女に悪意など微塵もないのだ。
夜遊びの後、夜明けのシーンの明るい切なさ。同じ女性で蜷川実花監督が撮った「さくらん」は原色のあざやかさが見事だったが、ソフィア・コッポラのこの映画の色合いはとろけそうに儚い。マリーの淋しい人生のように。
マリー・アントワネットがルイ16世とヴェルサイユから去るシーン、
「並木道をながめてるのかい」
「さよならを言ってるの」
なんて女の子なひとでしょう!
パステル色の宮殿の扉を破られた部屋でこの映画は終わる。
『Marie Antoinette サウンドトラック』
情報館所蔵 1F録音 S||Ma 51||CD
『ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹』 (ヴァージ・スーサイズ原作)
ジェフリー・ユージェニデス著
早川書房 2001
ISBN: 9784151200076
(text:snowy)