敬愛なるベートーヴェン
高尚な音楽って何?
「楽器演奏が趣味です。」と言うと「高尚なご趣味ですね。」と言われたことがある。言葉の裏に、何か素直に受け取れない雰囲気を感じたのを覚えている。クラシック音楽はまだまだ馴染みのないものなのかも知れない。
音楽家にとって偉大な存在であるベートーベン。どこの学校の音楽室にも肖像画が飾ってあり、交響曲「運命」を知らない人はほとんどいないだろう。才能豊かだけれど、どこか気難しそうで近寄りがたい大御所、といったイメージが多いようだけれど、この作品ではさらに人間味ある困った人としてベートーベンを描いている。
相手が気分を害するかどうかはおかまいなしに思ったことを口にし、近所の迷惑を顧みず作曲に没頭する。それでも彼の音楽は人々の心を掴み、人々の表情を輝かせる。彼の音楽の何が心を動かすのか。それは実際に作品を見て感じて欲しい。
この作品の多くは楽曲の演奏場面で占められている。言葉よりも音楽で伝えることを使命とする音楽家を描くのに相応しい。
クラシック音楽は「高尚」なんかじゃない。作曲家たちの悩み、苦しみの中からうまれた生の言葉であり、私たちに大きな「共感」として寄り添ってくれるものだ。曲の向こう側にある「人」に目を向けてみれば、クラシック音楽への印象や聴き方も変わってくるだろう。この作品がそんなきっかけになればと思う。
(Text:Booktree)