バッド・サンタ
腹黒いサンタっていうもの一興かと。
クリスマスの季節にショッピングモールのイベント会場でサンタの恰好をして子供たちと写真を撮ることを表向きの仕事にしている金庫破りが主人公。大金をせしめてはリゾート地で女と酒にふけり、金欠になると別の土地に渡り泥棒を重ねる流浪の季節労働者である。子供が大嫌いなその不良中年のもとに、あるとき太っちょの子が現れてから男の周辺が変化しはじめる。・・・という梗概。
クセのある俳優ビリー・ボブ・ソーントンを主役に起用したのは大正解。ロバート・クラムをドキュメンタリー映画の対象に据えたテリー・ツワイゴフならではの毒のあるキッチュな作品に仕上がっている。ハートウォーミングな結末で締めるハリウッド的予定調和が個人的には若干消化不良だが、サンタをネタに使って本当に暗い映画を作るってのもあんまりだろうし、適当な落としどころだろう。
映画を観ていると本筋とは関係のない瑣末事に気を取られてしまうことがある。この作品の場合は悪徳サンタの犯罪舞台となっている郊外型の大型商業施設。最近では日本でもすっかりお馴染みとなってしまったが、ショッピングモールというのは個人的にどうもあまり好きになれない。牧歌的な田園風景のなかに突如としてパチンコ屋のような無粋な建築物が屹立しているのを目撃したときに感じる切なさともまた異なる、サバービアの哀愁とでもいうべき空虚な印象を受ける。あの無菌っぽい清潔な人工性がしっくりとこない理由なのだろう。
だからこそ余計に、中年オヤジと少年とのぎこちない交流が血の通った温かみのある情景として際立っている。クリスマスをめぐるベタな映画を嫌悪する屈折した方でも許容できる作品なので、未見であればこの季節にこそ是非。
(text:情是)