賢者の贈り物
美しすぎるシニシズム。クリスマス・ストーリーの最高傑作。
誰もが知っているはずのオー・ヘンリーの名短篇。自分にとって一番大切なものを手放す代償に、相手がもっとも喜びそうな贈り物をしようと企図した結果、互いのプレゼントが無用の長物に帰すというこの甘美な皮肉はどうだ。決して大仰な筋立てではなく、倹しい夫婦の利他的な行為を通じて訴えるストレートな愛の物語である。自己犠牲に基づく無条件の贈与はキリスト教において<愛>と呼ばれ、重要な教義のひとつとされているが、この小説にはそのエッセンスが凝縮されている。これほどまでにミニマルで美しい作品が他にあるだろうか。僕が小説家ならこんな短篇を一本書ければ筆を折って隠棲してもいい。
<私>を主語とする行動原理が横行している当世にこそ、再度みなで読み返したい一篇である。
(text:情是)