ざくろの色

映画を超越した何か・・・溢れ出す、色、彩、艶。

まだ若いときに観て、それまでの偏狭な映画に対する概念を打ち砕き、その後の自分の嗜好性を決定づけた恐るべき映画がある。それがセルゲイ・パラジャーノフ監督のこの映画だった(同監督の他の作品は好きではない)。あまりにも有名な作品ではあるけれど、極私的パラダイムシフトを強いられた記念碑的作品として、未だロシア映画に縁遠い方々に紹介しておきたい。

この映画は、18世紀アルメニアの宮廷詩人/吟遊詩人である、サヤト・ノヴァの詩の世界を映像化した野心的な試みである。筋らしき筋はなく、奇跡的にまで美しいイメージだけを紡ぎ上げた映像のタペストリーがただただ夢幻の至福へといざなってくれる。映画全体を緩やかに貫く呪術的なリズムと、画面から横溢する奔放でエロティックな色彩の氾濫は、あまりにも野蛮でかつ繊細。特に、ソフィコ・チアウレリが詩人とその恋人を同時に演じる青年期の章では、美しき男女の容貌が、そのシンメトリー性において、合わせ鏡のように刻々と互いの性別を交換するため、喜ばしい酩酊感をおぼえる。

タルコフスキーの『鏡』とともにある種の映画は、芸術という枠を超越して、彼岸あるいは神話の域に在ることに僕は戦慄する。

(text:情是)

    fromKYOTO

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