京マチ子-京都が似合う女優- 

妖艶!クール! 京オンナじゃないけど京マチ子

京都出身だから京都が似合うか? けっしてそんなことはない。
京マチ子も苗字が「京」だから京都出身かと思いきや、OSK(大阪松竹歌劇団)を経て、25歳で大映に入社した生粋の大阪人だ。
では、なぜ京都が似合う女優なのか?それは彼女が「グランプリ女優」と呼ばれることに由来する。

『羅生門』   黒澤明 監督 1950年:ヴェネツィア国際映画祭グランプリ
『源氏物語』吉村公三郎 監督 1951年:カンヌ国際映画祭撮影賞
『地獄門』 衣笠貞之助 監督 1953年:カンヌ国際映画祭グランプリ
『雨月物語』 溝口健二 監督 1953年:ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞

1950年代、主演作が海外の映画祭で次々とグランプリを受賞し、いつしか彼女はグランプリ女優と呼ばれるようになる。国内外で高評価を得たこれらの作品群、実は全て京都で製作されており、京都が「日本のハリウッド」と呼ばれる一因ともなった。京都を舞台に撮影された日本映画史に残る名作たち、それは同時に京マチ子自身にとっても代表作である。これら彼女の代表作は全て時代劇、しかも『雨月物語』(戦国時代の近江が舞台)以外の3作品は平安時代の京都が舞台となっている。そして、そういった作品の持つ背景と彼女のルックス(下膨れに細い眉と目、典型的かつ古典的な美人顔)は見事なくらいにリンクし、京マチ子に京美人というイメージを植えつけた。古典的な京美人というとおしとやかで雛人形のような印象だが、彼女は貞淑な妻を演じても浮世離れした妖しい美しさに溢れている(『雨月物語』では妖怪でしたが・・)。

しかし、京マチ子はこれだけでは終わらない。50年代後半からは『赤線地帯』『鍵』『黒蜥蜴』などの官能的な作品に出演する傍ら、小津安二郎の『浮草』田中絹代監督作『流転の王妃』などにも主演、文芸作からアングラ的な作品までこなすマルチぶりを発揮する。その後も『女系家族』『華麗なる一族』といった山崎豊子原作の大作でも熱演し、日本屈指の大女優として君臨する。

京マチ子の凄さは、彼女から発散されるエロティシズム(決してイヤらしくはない)、妖艶さが作品のイメージすらも決定付けてしまうことだ。良くも悪くもその存在感は大きく、主演でなくても彼女の個性が翳むことはない。もし、『雨月物語』の女若狭が京マチ子でなかったら、ただの怪談になっていたかもしれないし、『鍵』の郁子が京マチ子でなかったら、ただのポルノになっていたかもしれない。

残念ながら、映画出演は1984年の『化粧』を最後に遠ざかっているが、83歳となった今でも舞台を中心に活躍中だ。だが、大河ドラマや舞台も良いが、やはり映画での彼女を観てみたい。昭和を代表する銀幕女優・京マチ子の復活を切に願う。


参考:『京都 絵になる風景-銀幕の舞台をたずねる-』
吉田馨著 ダイヤモンド・ビッグ社 2007.4 9784478078419
情報館所蔵:3F一般書 291.62||Y 86、3F指定図書 291.62||Y 86

"from Kyoto" 2007/12/14 で紹介中!

(text:Hh)

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