ロシュフォールの恋人たち
ああ、なんだろう、ジャック・ドゥミの映画のことを思い出すだけで、幸せな気分になる。
パステルカラーの溢れる色彩とコテコテのラヴストーリーがツボにハマる。そしてなんといってもミシェル・ルグランの音楽。サントラを聴き返すたびに厭なことなど忘れて部屋の中で踊ってしまう。はは・・・。
カトリーヌ・ドヌーヴとその実姉フランソワーズ・ドルレアック(残念ながら夭逝)の夢の競演!というだけでこの映画は観るに値するが、ミュージカル界の大御所ジーン・ケリーが出演しているのも見所。
未だ見ぬ恋人を待ちわびる美しい姉妹の前に、ジャグラーの一団、水兵たち、そしてアメリカ人の旅人(言わずと知れたアノ人・笑)などが現れる。しょっぱなから観客が予想できる、然るべきカップリングの運命の出会いは起こりそうで起こらず、恋人たちはすれ違いっぱなしで、そのままラストまでもつれ込む。
この手の恋愛劇の王道であるイライラ感がなんともいえず良いのは、楽しく軽快なミュージカル・シーンが連続しているから。典型的なハリウッド・ミュージカルやマサラ・ムービーのように、劇中に突然かつ不自然にダンス・シーンが挿入されるのではなく、ほぼ全編にわたって踊りつづけているというその贅沢さが、コテコテ感を感じさせず、飽きさせない所以なのだろう。
最近ヘコんでいる人はドゥミの映画を観て元気を出してください。
(text:情是)