動物と人間の世界認識
恥を忍んで白状すると、アセンブリーアワー講演会にお招きするまで、そして本学客員教授としてお迎えするまで、日髙敏隆先生のことを存じ上げていなかった。周りの人たちからは「ありえへん」と言われた。
粛々と恥じ入り、今更ながらではあったがちくま学芸文庫の新刊を手に取ってみた。・・・さて、これが小中学生を相手にしているような平明な語り口で、内容がめっぽう面白い!ネコ好きなら第1章を読むためだけでもマストバイの1冊だと思う。
本書では、それぞれの生き物たちには世界がどのように見えているのかという認識論がわかりやすく紹介されている。客観的環境というものは存在せず、認識主体となる動物にとって意味のある事物から構成された世界こそがその動物にとっての環境(「環世界」)であり、概念に基づき世界を構築する人間のあやうい認識を「イリュージョン」と称されている。動物行動学に関する本というよりも読みやすい哲学入門書の趣がある。日髙先生の著書を読んだことのないような環世界の狭い人間は僕だけかもしれないが、遅ればせながらも多くの人たちにこの本をお薦めしたい。
なお、京都精華大学では学内でおこなわれた実際の授業・教材・資料その他をデジタル化し、インターネット上で無償公開するウェブサイト「京都精華大学オープンコースウェア」を開設しています。日髙先生が担当されている基礎教育科目:生物学1(2007年度)もその講義録を確認できますので、一度覗いてみてください。
■京都精華大学オープンコースウェアはこちらから確認いただけます。
※まだ発展途上の段階ですが、今後コンテンツが追加される予定です。
(text:情是)