第5回情報館レビューコンテスト 銅鹿賞作品2

                                                

  •   受賞者: 山田太郎さん
  •   タイトル: 『世界音痴』
  •   著  者:   穂村 弘
  •   所  在:   3F閲覧室  
  •   請求記号:914.6 || H 83 

 

レビュータイトル: 「世界」でいちばん、さびしい「音痴」

 
 音痴とは、歌を歌うのに調子がとれない人のことを指す。「世界」+「音痴であること」=世界に対してどこかずれている調子外れな者のこと、それが世界音痴である。

 このエッセイの著者はもう四十幾つで、会社の課長という責任ある立場についている立派な大人であるにも関わらず、どこかおかしい。小学生でも突っ込みたくなるような偏った考えと、プライベートではまったくしっかりしていない生活を過ごしている。大人らしい大人になりきれていない。

 しかし著者の前には、世界音痴にしか見えない世界が広がっている。世界音痴の目から見る世界は、どこか輝いて見える。階段から一段落ちたような存在が、恐る恐る、でも必死で、あこがれの世界に手を伸ばすその瞬間。そのエッセンスのお陰で、呆れて笑ってしまうようなダメなおじさんのエッセイに、どこかほろりときてしまうのだ。
 

作品の講評
 
  本文は、前半をもっと簡潔に。後半は「世界音痴」にしか見えない世界とはどのようなものかを具体的に、しかし、説明的ではない言葉で語ってほしい。 (安藤先生)
 

 
 若者から見て立派な大人と思える人でも、本当はそんなに立派じゃないって。それは君がその歳になったら直に分かること。その時には今はほろりときてしまうところで現実の残酷さを知ることになるのでしょう。 (小林先生)
 

 

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  •   受賞者: 浜渡浩満さん
  •   タイトル: 『グミ・チョコレート・パイン(グミ編)』
  •   著  者:   大槻ケンジ
  •   所  在:   3F閲覧室  
  •   請求記号:913.6  || O 89

 

レビュータイトル: 「人生ってグミチョコ遊びに似てる。」

  
  窓際を好む冴えない少年が世界を恨みながら心の地下室でこっそりと作り上げた核兵器。いつしか、誰もが、それが糞花火にも劣る代物だと知る時が来る。アイドルだってうんこをする事を、自分が凡人である事を、あの娘がアイツの前じゃあんな声を出しちゃう事を知る時が来る。僕の場合は高校一年生、このグミチョコを手にした時がそれだった。

 「俺は低俗なクラスの連中とは違う」それを証明するため為、映画館に通い、恋をし、ロックバンドを結成する劣等生賢三に、学校では日の目を見ることのない我ら文系少年たちはまんまと自己を投影し、みごとに絶望する。

 もういいよ。青春もロックも童貞もはやんねえよ。ただ何故だろう、僕の青春を終わらせたこの物語を今一度開けば不思議と、あの頃の僕たちがいる。この本がなければ僕の青春は無いと言える。決して忘れちゃいけない気持ち、わが青春の墓標、大槻ケンジの半自伝小説、グミ・チョコレート・パイン。
 

作品の講評
 
 墓参りしてのレビューというのがいいですね。青春の墓標…でもそこに賢三はいません、千の風にもならず、復活した筋肉少女帯で大活躍中です(笑)
 新しいアルバム『蔦からまるQの惑星』は良いらしいよ♪  (佐川先生)
 
 やっぱり青春文学は素晴らしい。と、このレビューを読んで思った。そう思わせる文章でもある。優れた青春文学(だけでなく、芸術でも何でも)は、高速のノスタルジーを含んでいる。半過去よりちょっと前の時制を。このレヴュー自体がその青春文学になってもいる。(島本先生)
 

 

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