第5回情報館レビューコンテスト 銀鹿賞作品
- 受賞者: 細魚さん
- タイトル: 『モ モ』
- 著 者: ミヒャエル・エンデ
- 所 在: 3F閲覧室
- 請求記号:909.94 || E59
レビュータイトル: 「薄汚れたTime is Moneyにさようなら」 |
もし、そこのあなた。今、忙しいですか?明日は?明後日は?一年後は?死ぬまで忙しいですか?どこにいったんでしょうね。あなたの時間。 ある日、町外れの廃墟にやって来た孤児のモモ。類稀な「話を聞く才能」を持つモモには、老若男女たくさんの友達ができました。貧しくも満ち足りた生活。そこへ「灰色の時間泥棒」たちの魔の手が忍び寄ります。便利で豊かなモノと引き換えに奪われる時間、色あせる人々、虚飾にまみれていく町並・・・・・・ モモは時間を、みんなの笑顔を取り戻すため、時間泥棒たちに立ち向かっていきます。あなたの時間は本当にあなたが使っているのか、それとも時間泥棒に喰われているのか。ふと気付けば、自分の肩に手を回す時間泥棒の凍った笑みが頭をよぎり、胃がヒヤリと寒くなる。時間という側面から現代社会の病理を描く児童文学の傑作。これを読む時間まで盗まれてはいませんよね? |
受賞者コメント |
銀鹿賞、ありがとうございます。『モモ』はとても思い出深い作品なので、嬉しい限りです。今は時間泥棒の天下のような世の中ですが、この大学はその魔手からいささか遠い場所と見受けられます。学生の皆様、ご健闘を。 |
作品の講評 |
このごろ学生からよく聞く言葉――「忙しい、時間がない」。なんの言い訳かというと、多くは「レポートが期日までに出せない」場合。なに言ってんだ! である。学生時代のいま、時間がなくてどうする? 皆さん、自分自身が時間泥棒にならないように。 (田口先生) |
誰しもがふと我を見つめ直してしまうような問いを投げかけることで、広く老若男女に読み継がれている名作の魅力を存分に感じさせてくれます。最後の一言にこめられたユーモアとアイロニーもキラリと光っていました。 (佐藤[一]先生) |
ちょっともの足りない…と読み進み、最後の一文のソフトな脅迫にやられました。『モモ』を読んで、読み返して、盗まれた被害者どころか、自分自身が灰色の男たちや灰色の女たちになりかけている現実に気づかないと! (佐川先生) |
短文で本の内容を手際よく伝えることが、レヴューの肝。冒頭の意味ありげな問いかけから、続く2段落で内容を簡潔にまとめ、最後に解釈もちゃんと施しているとことが評価できる点でした。 (佐藤[守]先生) |