小林かいちの世界展
帝塚山学院大学 山田俊幸教授と情報館とのコラボレーション再び・・・。
大正から昭和初期にかけて活躍したとされる京都出身のデザイナー、小林かいち。この経歴不詳の謎の画家が遺したメランコリックな抒情的版画(絵封筒)を集めた小規模な企画展を開催します。高畠華宵や竹久夢二に心酔する方なら、かいちの描くアールデコ風絵封筒は必見です。
・注意事項
・開催要項
・第2期展示作品例
・特別講演会「謎の小林かいち」
・参考情報
・関連グッズ販売
・展覧会開催に寄せて
・館長挨拶「小林かいちを見る」
・展覧会場写真
注意事項
第2期にご来場をお考えの方へ
会期中の休館日は次のとおりです。遠方からお越しいただく方におかれましてはくれぐれもご注意くださいますようお願いいたします。
1月13日(日)、14日(祝)、18日(金)、19日(土)、20日(日)
開催要項
■会期
第1期:12月10日(月)〜12月22日(土)
第2期: 1月 7日(月)〜 1月26日(土)
※作品入れ替えあり(約150点×2期=総計300点を展示)
■開館時間
平日8:30-20:30 土曜日8:30-18:00 (日祝日休館※)
※その他、年末年始や大学の定める休校日も閉館となります。
【注意】第2期にご来場をお考えの方へ:会期中の休館日は次のとおりです。
1月13日(日)、14日(祝)、18日(金)、19日(土)、20日(日)
■会場 京都精華大学情報館3F スペース「tatami」入場無料
■主催 京都精華大学情報館
■問い合わせ先
京都精華大学情報館図書情報課(担当:西口) tel: 075-702-5137 fax: 075-723-1505 email:kslib*kyoto-seika.ac.jp (*を@に変えてください)
第2期展示作品例
特別講演会「謎の小林かいち」
日時:2007年12月21日(金)18:00-19:30
講演者1:山田俊幸(帝塚山学院大学文学部教授)
講演者2:富山由紀子(フリーライター)
聞き手:島本浣(京都精華大学学長/情報館長/芸術学部教授)
会場:京都精華大学情報館1Fメディアセンターホール
備考:入場無料・事前申込不要・定員60名
富山さん講演会レジュメ tomiyama.doc(DOC形式:22.0KB)
参考情報
謎の画家「小林かいち」については以下もご参照ください。
・小杉放庵記念日光美術館の2007年度展覧会開催記録
・山田俊幸共著『小林かいちの世界―まぼろしの京都アール・デコ』
・山田俊幸著『アンティーク絵はがきの誘惑』
・小学館『Domani』2008年1月号の付録はかいちのカレンダーです!
'08 Domaniカレンダー「京都・謎の絵葉書作家 小林かいちのぽち暦」 ※当展覧会も誌上で紹介されています
・new京都新聞 2007年12月30日朝刊の「凡語」(1面コラム)で紹介されました。
会期中は来場者に特製パンフレット(12p)を無料頒布します。山田俊幸・辺見海(『版画芸術』編集者)・田丸志乃(高畠華宵大正ロマン館主任学芸員)・中塚玲子(小林かいち著作権事務所)ら執筆陣書き下ろしのオリジナルです。会場にてアンケートにお答えいただいた方に限り、もれなく進呈いたします。
関連グッズ販売
情報館から徒歩30秒の悠々館2Fにある画箋堂(購買部)にて展覧会関連グッズを販売します。展覧会期間中、小林かいちのレターセット (色違い2種類)や上記の山田先生著作が店舗入口の特設コーナーに陳列されます(既に販売中)。ご興味のある方はぜひ足をお運びください。
(問い合わせ先)画箋堂 tel:075-722-7311
展覧会開催に寄せて
「小林かいち」は謎の抒情版画家です。
その仕事は、今からほんの80年ほど前、大正12年の関東大震災の頃から始まっています。活躍期は昭和のひと桁。戦後の昭和20年代の足跡も残っていますが、かいちの仕事の跡はそのまま途絶えました。仕事の内容からは、西陣あたりの染め・織りの職人であるとも、図案家であるとも噂されています。ですが、まったく経歴の詳細は不明の画家なのです。生前の評価も高かったのかどうか、それすらも分かりません。忘れ去られたようになっていた画家ですが、最近、欧米の大正ジャポニズム・コレクターなどに、過剰ともいえる色彩や、メランコリックな抒情的版画の魅力が再発見され、日本でもここ数年、ますます注目を浴びるようになりました。エスティ・ローダー会長とボストン美術館とが収集した日本絵葉書のなかでも、この小林かいちはとりわけ重要な位置を占めています。
「小林かいち」は京都の画家です。
大正から昭和にかけての1920年代、関東大震災によって関西の文化が大きく興隆をみせました。京都もまた、日本の前衛文化の中心となります。ヨーロッパからやってくる新美術の情報、新しく生まれつつある若者たちの自我表現、さらに京都の伝統産業の基盤としての琳派風表現、そうしたものが小林かいちの版画世界に反映し、かいちは独自の「かいち世界」を形作りました。欧米の大正ジャポニズム・コレクターたちには、それがかいちの魅力なのです。それは、京都の木版画で作られたアール・デコ風版画でもあります。わたくしたちはそれを「京都アール・デコ」と呼ぶことにしましょう。
京都精華大学情報館の「小林かいちの世界」展は、前期・後期の二期に分けて小林かいちの魅力を知ってもらおうと企画されました。初めて京都で開催される小林かいちの回顧展でもあります。この機会にぜひ、「小林かいちの世界」を堪能してください。
山田俊幸 2007.10.17.
館長挨拶「小林かいちを見る」
数年前から、京都精華大学情報館は従来の図書館の枠を超えて、「情報館」の名に相応しい情報の発信基地を目指してきました。本館の情報の柱である図書・印刷文化とメディア文化の発信です。その一環として、昨年から2階、3階のフロアーを使っての独自の小展覧会を行ってきました。今回の「小林かいちの世界ー京都アール・デコの真髄」展もその流れにありますが、この展覧会はこれまでに比べてもユニークなものだと思います。
まず、主人公である「小林かいち」というイラストレーター(版画家)自身がユニークであるからです。大正から昭和にかけて京都で活躍したことだけはわかっていますが、どのような人なのかということになると、現在までほとんど知られていないのです。ミステリアスなイラストレーターなのです。ここ数年、何人かの研究者たちが「かいち」の謎の解明に挑戦してますが、人物像はいまだベールに包まれています。
その「かいち」が活動したメディアは絵葉書や絵封筒という小さな芸術世界です。京都三条に「さくら井屋」という昔からの土産屋さんがありますが、「かいち」は大正時代この店に雇われ、多くの絵葉書や絵封筒の絵柄を描いたのでした。そういう意味では、イラストレーターというより「絵描き屋」というのが相応しいのかもしれません。展覧会に出品するような版画家でもなく、大ポスターをデザインするのでもない、いわば無名の「絵描き屋」なのです。そんな「かいち」が知られていないのは無理もありません。活躍した当時でさえ、多くの人に知られていたとも思えません。
しかし、その絵葉書や絵封筒を見ると、絵柄の独特な感覚にたちまち引きこまれます。その魅力は、同時代の竹久夢二、高畠華宵、蕗谷虹児といったスターたちに劣るものではありません。というより、また別の魅力をたたえています。
本展で味わっていただければと思いますが、ヨーロッパのアール・デコの香り(アール・ヌーボーの感覚もあります)と、大正という時代のメランコリックで少女的な感傷性をうまく混合した視覚造形性(デザイン性)は、現代のわたしたちの気分と共通するように感じるのです。こんなイラストレーターが見逃されていたとは!歴史が発見させてくれる幸せというべきでしょうか。
「小林かいちの世界ー京都アール・デコの真髄」展は、規模としては小さなものですが、「かいち」の活躍した京都での初めての展覧会です。ぜひ、絵封筒に浮かびあがる「かいちの世界」に魅了されていただきたいと思います。
島本浣
展覧会場写真
情報館2Fフロア部
情報館3Fスペース「tatami」