戦争、国家 VS. 個人 〜9.11後のアメリカ発ドキュメンタリーから〜:マルチメディア講演会

講演:リナ・ホシノ(ドキュメンタリー映像作家)、 ケーシー・ピーク(ドキュメンタリー映像作家) 、グレース・シミズ(Japanese Peruvian Oral History Project代表)
日時:2004年11月16日(火)14:40〜16:40
会場:京都精華大学情報館1階AV大ホール

入場無料・申込不要

講演要旨

9.11同時多発テロへの報復としてアフガン空爆が開始されるなか、米国内では多くのイスラム系アメリカ人がバッシングの被害を受けた。また、第二次世界大戦中のアメリカにおいても、国内日系人のみならず、人質交換を目的に南米から日系移民が拉致され強制収容所に抑留されたという暗い過去があった。このような戦時下に抑圧されたマイノリティの知られざる歴史に陽の目を当てたのが、『「故郷」を失った人々の物語 Caught in Between』、『隠された強制収容所 Hidden Internment: The Art Shibayama Story』という二つのドキュメンタリーである。今回の講演会では、両作品の上映ならびに制作者らによる講義をおこない、差別の痛みや人権の尊さを再認するだけでなく、国家に対する個人のポジションやグローバリズムに潜む危険性など、社会問題の本質を多角的に考える機会としたい。

関連イベント

上映会 同日12:10〜13:10 会場:AV小ホール
『「故郷」を失った人々の物語 Caught in Between』(監督:リナ・ホシノ)『隠された強制収容所 Hidden Internment: The Art Shibayama Story』(監督:ケーシー・ピーク)

プロフィール

リナ・ホシノ(Lina Hoshino)

日本人と台湾人の両親をもち、サンフランシスコ、日本で生活するドキュメンタリー映像作家。デザイナーとしての本業の傍ら、93年よりビデオ制作を開始。世界各地のフィルムフェスティバルで上映され入賞作品も多数あり、”Story of Margo”は東京ビデオフェスティバルで入賞。サンフランシスコで活動する日系団体「Nosei Network」の主要メンバーでもある。

ケーシー・ピーク(Casey Peek)

ドキュメンタリー映像作家。「ピークメディア」主宰としてサンフランシスコ・ベイエリアを拠点に全米日系歴史協会や全米移民難民権利ネットワーク等と協同で各種プロジェクトを展開する。メキシコ移民に対するリオグランデ河沿岸の米国国境警備の実態を扱った代表作”New World Border”をはじめ、様々な映像作品を手掛けている。

グレース・シミズ(Grace Shimizu)

法学博士。戦時中アメリカに抑留された経験をもつ父親の娘として、「日系ペルー人オーラルヒストリープロジェクト」を立ち上げた。アメリカ政府からの補償を取り付けるべく、被害者家族らとともに戦争体験を記録して、この知られざる悲惨な事実を巷間に広報している。カリフォルニア在住。

講演レポート

9.11同時多発テロ以降の争いが続く中、アメリカ国内でイスラム系アメリカ人へのバッシングが激増した。今回はマイノリティの知られざる歴史や、現在のさまざまな問題についてのドキュメンタリー映画を見ることができ、監督のお話も伺うことできた。

はじめに、ケーシー・ピークさん監督の、『隠された強制収容所Hidden Internment:The Art Shibayama Story』が上映された。日本では戦前、ペルーへの移民が数多くいた。商人として成功した日系ペルー人は豊かな生活を送っていたようだ。しかしそこに悲劇が訪れる。第二次世界大戦が始まり、日系ペルー人の立場は悪化した。追い討ちをかけるように日本軍が真珠湾攻撃を行い、反日運動は激化した。それから多くの日系ペルー人はアメリカへ拉致されるようになったのだ。目的はアメリカ兵の人質交換のため。日系の人々は質素なつくりの収容所に強制的入れられ、苦しい毎日を送った。自由や家を奪われ、人質交換に利用された日系の人々にどんな罪があるというのだろう。戦争が終わり多くの方は日本へ戻された。国外退去をまぬがれた方は、ペルー国家が受け入れを喜ばないということもあって、さまざまな苦労の上アメリカに落ち着くことができたという。私は今までこんな歴史があるということを全く知らなかった。

時は今、また同じような立場に苦しむ人々がいる。二作目に上映されたドキュメンタリー映画はリナ・ホシノさん監督の『「故郷」を失った人々の物語 Caught in Between』だ。9.11同時多発テロ以降、一般市民からイスラム系アメリカ人へのいやがらせが激増した。証拠がないにもかかわらずイスラム系という理由でさまざまな調査も行われている。アメリカの文化の一部であるにもかかわらず、マイノリティの苦しみが伝わった。イスラム系アメリカ人はアメリカ人であるにもかかわらず、国家にとって認められない存在になっている。戦時中にあった日系アメリカ人の境遇と重なった部分もあり、現在アメリカ国内でマイノリティとされる人々が自由と平等のために活動を盛んにしている。この先、同じ過ちを決して繰り返してはいけない。そういった強い思いを感じることができた。活動はグローバルに広がりつつある。

次に質疑応答が行われた。真珠湾攻撃以降の日系アメリカ人、9.11以降のイスラム系アメリカ人の辛苦な現実を聞くことができた。

イスラム系アメリカ人の中でも特に移民の人々はより立場が弱いのだそうだ。移民であるということで疑われ、厳しく調べられる。見た目だけでテロリストと疑われる場合もあるそうだ。プライバシーや個人の権利も関係ない状態が進んでいる。これは人種という網を使って、安易に犯罪を捕まえようとするからだそうだ。またそのために安全だと感じる人間がいるのも問題である。どういった安全が、恐怖をなくす手段になるのかを真剣に考える必要があると語っていた。

メディアも恐怖をあおるような報道を行い、時には情報操作も行われるそうだ。情報はあふれているにも関わらず制限されている。今回のような活動をされている、オルターナティブな独立したメディアの存在は重要だということがわかった。対国家的なものは、受身でいると決して知ることができない。しかしそういったオルターナティブな中にこそ重要な真実があるのではないだろうか。

文:金森杏(人文学部)


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