『視覚付き音具「オプトロン」とサウンドを巡る美術の現在』:マルチメディア講演会

講演:伊東篤宏 (美術家/OFF SITE代表)
日時:2003年6月17日(火)16:30〜18:30
会場:京都精華大学情報館メディアセンターAVホール

予約不要

料金:無料

講演要旨

今回の講演会は大きく2つのテーマで進めていきます。
まず1つ目は、私のサウンドパフォーマンスを観て、聴いていただいてから、その発想や成り立ち、そしてその経緯と現在をお話しします。その中では「美術と音」に関する近代史を私個人の活動に絡めて少しだけ紹介したいと思います。
2つ目は、私が東京で運営しているギャラリー / フリースペース「OFF SITE」の活動を通して、私が感じている今現在の「美術と音」あるいは「サウンドアート」の話や、アーチストの紹介などが出来ればいいなあと考えてています。あまり硬い話は得意ではないので、ラフに、ざっくばらんに行きたいと思います。受講される皆さんには気軽に楽しんでいただければ幸いです。(伊東篤宏)

プロフィール

伊東 篤宏(いとう あつひろ)

1980年代後半より美術作家として活動を始める。
98年から展覧会などでサウンドパフォーマンスを開始し、インスタレーションと同素材である蛍光灯の発光に伴う放電を増幅し出力する視覚付き音具「オプトロン」を制作。そのパフォーマンスは現代美術側からの音あるいは音楽へのアプローチであり、実際に音楽家との共演も多い。
現在、東京・代々木にてフリースペース「OFF SITE」を運営している。

講演会風景


【潜入レポート】

「蛍光灯が発光する際の放電を利用して音を出す」——。オプトロンについてのそんな解説を聞いて、実は情々丸、クラゲみたいな形をした蛍光灯がぼんやりともって、「ぽわ〜ん」とか「ぷるぷるぷる」とか可愛い音がでてくるのかな〜、なんて勝手に想像していたんです。と、と、ところがっ。実物に出会って目からウロコ、っていうかさらに激しく「目から目玉」。まさに想像を絶した体験でした。

まずパッと見た感じは、よくホームセンターとかで売ってる縦長タイプの電熱ストーブに似てます。だからオブジェというよりは「器具」って感じ。「ふ〜む。ビジュアルより音で勝負ですな」とか一人ごちて、しばし会場を見渡す。オオ。用意した座席もほぼ埋まって、なかなかの入りじゃないか。これで講師の伊東さんにも顔がたったゾ、とまずは一安心。そうこうするうちに講演がスタート。

講師の伊東さんは、帽子を目深にかぶって静かに話しをされるタイプ。会場に心地よい静けさが満ちる(ちょっと癒されたりして)。冒頭の話もほどほどに「じゃ、まず聞いてもらいましょう」の一声で、いきなりオプトロンの実演!会場全体が未知のものに出会う期待でわくわくしてるよ。明かりが落ちて、蛍光灯がともると、さあ出た音が!——「ガガッビチビチビチッズババババ」(こ、こ、こりは、かなりアグレッシブですう!)「ズダダダダッギギギッジュガガガガ」(ああ、蛍光灯が怒ったように激しく明滅してる!)「ガガッビチビチビチッジュババババ」(ひ〜〜〜!)

こうして10分ほどが過ぎ、オプトロンの明かりと音がフェードアウト。情々丸は正直いって、電気の接触不良かも、とか思っていたのだが、再び語り始めた伊東さんの様子はあくまで平静。ふむ。決して不測の事態が起きたわけではなさそうだ。で、伊東さんの話に耳を傾けると、このオプトロンという音具は、伊東さんが10代の頃よく聴いていたラジオの音声が、部屋の明かりを点けるたび「ぶちぶちっ」と乱れることから着想したのだそう(情々丸の頭じゃ考えつかないよ)。「そのぶちぶちを意図的に起こし、当時から好きだったパンクロックの方向に発展させたのがオプトロンのパフォーマンス」という話を聞いて情々丸もやっと納得(物分り悪すぎっすよね)。

——という訳で、最初の勝手な想像とはかなり違ったけど、創造心を刺激される得がたい体験をした講演会でした!

【聴後雑感】

「このパフォーマンスを観た人に、感動したり納得してもらいたいと思ってるわけじゃなくて、戸惑いがあったり違和感があったり、っていうそれぞれの感じ方をそのまま持ってほしい」という伊東さんのお話が印象的でした。めまぐるしく動いていく日々の生活で、目の前に次々と起こる出来事を「効率よく消化」することって、もはや現代人のミッションなのかも。でも、そんなライフスタイルに「哀しいよね」とか思ってる自分もいたりする。伊東さんの講演会では、そんなもう一人の自分が久しぶりに一息ついた気がしたのでした。(情々丸)


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