オーケストラに恋して
毎年恒例の京都学生祭典
昨年同様、今年もこの催しのひとつとして企画された
「ドリーム・オーケストラ」を聴きに行きました。
なぜ「ドリーム」なのかというと、関西地区を中心とした
20数大学に所属する学生が、年に一度だけ発表の機会を
もつというところから、この名称がついたそうです。
聴衆は学生や、演奏者のご両親などと思われる方が大半でしたが、
私にはそうしたしがらみもなく、純粋に音楽を楽しませていただきました。
今年のメインは、ブラームスの交響曲第一番ハ短調作品68。
曲を構想してから完成までに実に21年かかったという、苦悩の人ブラームス
ならではという大曲です。
たまたまこの曲を学生時代にオーケストラの一員として弾いたことがあり、
その当時に使っていたスコア(総譜、すべての楽器の楽譜が曲の進行に
沿って記載されたもの)を読みながら、曲を聴いてみようと思い立ち実行
しました。
するとどうでしょう、まるで自分が指揮者になったような昂揚感を味わえるでは
ありませんか。
そしていつも指揮者に指摘されていた「他のパートの音を聴け!」という
ことが、とっても良く理解できた気がしました。現役当時いくら合わせようとしても
合わなかったリズムが、「あーそうだったのか」とウン十年ぶりに氷解した時の
嬉しさ。
しかし、である。
緒方英子著『オーケストラが好きになる事典』(新潮文庫)の冒頭に登場
されるN響コンマスの方が「演奏中に最前列でスコアを読んでいる人が
いて、とても気になった。ルール違反とは言わないが、もっと場の雰囲気を
味わって欲しい。もしスコアを読むならば目立たないところで」というニュアンス
のお話がありました。私は最前列ではなかったけれど、前方寄りに座っていました。
反省。
オーケストラはひとりで楽器を弾くのではなく、他のメンバーとの調和が何よりも
大切とされる。それは演奏者だけでなく、聴く側にも要求されるものだということを
あらためて知らされた今回のドリーム・コンサートでした。
(text:Bach憧憬)