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懐かしい映画を観た気がした。
それは、せりふのやりとりに間(ま)が感じられる映画、と言う意味である。
テンポが早く、目も耳も忙しく働かせて観ることを強いられる今風の映画
に慣れた身には、その展開がもどかしく感じられるかもしれない。
内容も決して明るいものではない。
評論家・川本三郎氏の同タイトルの原作をもとに制作された映画である。
ジャーナリストである主人公が、殺人事件に関わったとされる人物について
警察から事情を訊かれるが、取材源の守秘義務を守り通した結果、主人公は
有罪となり、勤めていた新聞社を懲戒免職となる、というもの。
主人公はジャーナリストと言う職業を持ち、時代は大学紛争真っ只中の60年代
後半。個々人が置かれたシチュエーションはそれぞれに違うし、時代が違えば
選択もまた違ったものとなるだろう。
しかし、こちらを立てればこちらがたたず、というどちらを選んでも自分が苦境に
立たされる二者択一は、現在も我々が往々に経験することではないだろうか。
選択した結果がどうなろうと、選択した者自らがそれを背負って生きて行くしかない。
しかし指標も羅針盤もなくては、人は先に進むことはできないであろう。
先人が歩んできた道程をこうした本を通して知ることは、決して無駄ではないと
私は考える。
情報館所蔵情報
3階閲覧室:916Ka95
川本三郎『マイ・バック・ペ-ジ:ある60年代の物語』
(text:Bach憧憬)