マエストロ 児玉清さん
児玉 清さんが亡くなった。
児玉さんが司会をしていた土曜日の書評番組、日曜日のクイズ番組を
楽しみにしていたファンのひとりとして、その突然の死が惜しまれて
ならない。
36年間続けてきたというクイズ番組の司会者として児玉さんを知ったので、
大学卒業後に俳優として芸能界に入られたことを知ったのはずっと後のこと
であるが、いつ見てもダンディーでいやみがなく、穏やか。
そして膨大な読書量によって醸し出される教養の豊かさに、上品な生き方を
されている男性だとつくづく思ったものである。
クイズ解答者との掛け合いや書評番組でのゲスト、作家の方々との会話は
ウィットに富んでいて、われわれ視聴者をとても楽しませてくれた。
他人との衝突など想像もつかない児玉さんだが、俳優になったばかりの頃
あの「世界のクロサワ」に反発して、監督を殴ってしまおう(もちろん実行されなかったが)
としたこともあった、という。
そんな若者特有の跳ね返りな面が彼にもあったことを知り微笑ましくもある。
「慎重かつ大胆に!」
クイズ番組の終局近くのヤマ場で、解答者そして視聴者に語りかけていた
このフレーズは、児玉さんの生き方そのものであり、われわれに遺してくれた
人生訓ではなかったか、とわたしは思っている。
児玉さん、本当にありがとうございました。
(text:Bach憧憬)