『流しのしたの骨』
近いようで遠いところ
恋愛小説、SF小説、推理小説・・・・。
何かが起こって、展開して、大団円。そんな感じの読書は、
もういいやって思ったとき、あなたはどうしますか?
ちょっと読書をやめてみる?
違うことをはじめてみる?
私は、この小説をおすすめします。
ちょっと変わった家族の秋から春にかけての出来事を書いてある
ただそれだけの小説、「流しのしたの骨」
日常をはさみで切り取って本にされたような内容です。
大きな山や谷がなくて、ハッピーエンドでも悲劇でもなくって・・・。
いろんな出来事はありますが、時間の流れはとてもゆるやかです。
これが気軽に楽しめる理由のひとつです。
この小説のもうひとつの楽しめるポイントは、「家族」が題材であることです。
江國さん自身は家族を題材にしたことについて次のようにおっしゃってます。
よそのうちのなかをみるのはおもしろい。
その独自性、その閉鎖性。
たとえお隣でも、よそのうちは外国よりも遠い。ちがう空気が流れている。
階段のきしみ方もちがう。薬箱の中身も、よく口にされる冗談も、タブーも、
思い出も。それだけで、私は興奮してしまいます。
≪新潮文庫「流しのしたの骨」あとがきより≫
この小説に登場する家族の構成員6人、一人ひとりに細かな設定
(性格、癖、好きなもの)があるため、よりリアルに「よそのうち」を感じられます。
この異質な空間をのぞく感じも楽しめる理由のひとつです。
家族ってちょっとおかしなものですよね。
『流しのしたの骨』 江國香織 著(マガジンハウス)
3F閲覧室 913.6 / E44
(text:図書:しげを)