開高健はカッコいい!
先ずは、表紙を見ていただきたい。
若き開高が写っている。
壽屋(現・サントリー)に勤めているときだろうか、それとも芥川賞をとり
作家として独立して間もない頃だろうか。
こんなシャープな姿形をした開高を見るのは初めてである。
写されていることを多少は意識してのことではあろうが、
この悲しげな目はどうだ。
私の知る開高は、体型は丸いがその語り口、そのシャープな眼差しから
私は「剃刀」のような作家、との印象を持っていた。
開高の生前に話をする機会を持っていたとしても、完全に無視されるか、
よくて冷笑を浴びせられる、そんな近寄りがたい雰囲気を漂わせていた。
しかし、中国の川で格闘の末釣り上げた大型のイトウを「自然のものは自然へ」
だったか、「川のものは川へ」と言ったのか忘れたが、イトウを河にリリースした開高は
実にかっこよかった。
『耳の物語』は彼の自伝である。
子供時代の感性は、みな同じようなものなのだ、とあらためて思う。
表紙の写真とともに、開高に少し近づいた気にさせる本である。
*情報館所蔵資料*
『夜と陽炎』 (.耳の物語 / 開高健著 ; 2)新潮文庫, 1989
3F閲覧室 一般図書 文庫新書コーナー 914.6||Ka 21
(text:bach憧憬)