ボヴェ太郎氏の舞踊公演
舞踊家ボヴェ太郎氏についてお話をしたい。
昨年の話で恐縮だが、10月10日にJR伊丹駅の近くにあるアイホール
にて氏の公演『Texture Regained – 記憶の肌理』を観た。
当初、バレエ様の動きを想定していたので、大変静謐な雰囲気での
舞いに戸惑いを禁じえなかった。しかし、プルーストの『失われた時を
求めて』をベースとしたものなので、静かな舞いとなるのは、当然と言えば
当然のことではある。
文学座所属の女優である渋谷はるか氏の洗練された語り(プルースト
の文章を本を見ずに語る。驚異!)とのコラボである。プルーストを
読んだことのない場合は、少し難解な感じもしようが、このどこまでも
静謐さを保つボヴェ氏独特の舞いは、人をして心落ち着かせる不思議な
魔力を持つ。
後日、ボヴェ太郎氏と面識を持つこととなったが、伊丹での鑑賞の際に
わが身を捉えた落ち着いた空気、それを自ら体現する人である。失礼ながら
この若さ(27歳!)で、この落ち着いた物腰には、ムムこの人デキル!
と思わせるものがある。素適な空気を身に纏う方である。
京都精華大学では、バレエ・リュス(=ロシア・バレエ団)がパリのシャトレ座
で旗揚げ公演を行ってから今年で100年目を迎えることを記念して、今月13日
(火)より開催される企画展『バレエ・リュス〜その芸術性とデザインの魔力』
(企画・総監修 舞踊研究家 芳賀直子氏)の関連イベントとして、開催初日
である13日午後6時より、学内水上ステージにてボヴェ太郎氏のの舞踊公演を
行う。空間と身体との関係性を通してダンスの可能性を模索するボヴェ氏の
舞いを鑑賞して、心和ませる異次元の空間に触れていただきたい。
(text:bach憧憬)