『広き迷路』 三浦綾子
愛と憎しみは表裏一体と言うけれど。
情報館広報誌『情‘s people』に寄稿したのをきっかけに、久しぶりに三浦綾子さんの未読の作品を読んでみたくなり、購入しました。文庫本の裏表紙にある作品紹介には「都会の迷路に潜む人間の孤独と欲望を、息詰るサスペンスで浮き彫りにした異色長編」とありますが、読んでいる途中で「もしかしたらこういうことかも」とわかってしまいました。といっても、決して自慢をしているのではありません。この作品は単にサスペンス調をとっているだけであり、サスペンス形式で物語を追うことにより、登場人物、特に町沢加奈彦の心の醜さを浮き彫りにしているに過ぎないのではと思ったのです。そして彼の醜さが浮き彫りになればなるほど、結末の哀しさが胸に迫ってくるのです。読後、じんわりと哀しい感動が湧き上がってきました。
『広き迷路』 三浦綾子著 新潮社, 1987
情報館所蔵:3F文庫新書コーナー 913.6||Mi 67||新/文
(Text:Booktree)