越中八尾 おわら風の盆
とても手の動きが美しい踊りです
先日、富山市の南部に位置する越中八尾という町で、
「おわら風の盆」と名づけられた踊りを見てきた。
きっかけはJRのパンフレットに載っていた1枚の写真。
編笠を深くかぶった女性の、指先がとても気になる写真だった。
両手の人差し指だけを一本横に突き出す、その動きがあでやかさを
強調している。
この踊りを題材とした高橋治の『風の盆恋歌』を読んだ。
八尾に行って、この踊りを見たくなった。
9月1〜3日の3日間の踊りのためだけに、八尾の人たちは
1年間練習を積んでいるそうだ。
だけど観光のための踊りではないから、いつ踊りが始まるかは
観る者には予測がつかない。
三味線や胡弓、太鼓の音はどこかから聴こえてくるが、
どこで踊っているかは定かではない。
鏡町、という町内にある広場でひたすら待つこと1時間あまり、
やっと踊り手、囃し方がやってきて、「輪踊り」が始まる。
よく見ていると、あの指先の気になる踊り方をするのは、
踊り手の中でたった一人の女性だけである。
しかもそれは、清流の川の流れのようなよどみのない踊りの
ほんの一瞬の動作であり、うっかりすると見過ごしてしまうくらいだ。
決して派手な踊りではない。しかしその胡弓の少しものがなしい音色
とともに忘れ難い踊りである。この踊りを何度も見にくるリピーター
が多いというのも頷ける。
しかし気になるあの指の動きは、何を意味しているのだろう?
(text:bach憧憬)