クレーターと巨乳
ふ〜ん、アノ人はそういうのが好きなんだ・・・。
別に僕の女性の好みについて話すわけではありません。先日、某先生から寄贈された本を整理しているときに意外なタイトルを発見しました。僕も1年程前に読んだ小説なのですが、かつてはその先生の蔵書であったという事実に意表をつかれました。しかしよく見ると書店からの買掛伝票が挟まったままだし、スピン(栞)もきれいなままだったので、おそらく新聞書評かなにかで採り上げられているのをみて購入された積読本なのだろうと推察されます。まさか新聞のTV番組欄に掲載された「11pm」(今の子は知ってるかな?)の大仰な惹句に毎度期待しては裏切られる小中学生でもあるまいし、表題に騙されたってわけでもなさそうだから。
男性諸君なら誰しも目にする週刊誌のグラビアでたびたびクレジットされているのが写真家の藤代冥砂。この本は数年前に彼が『SWITCH』誌上で連載していたちょっぴりエッチな11の短篇を集めた処女小説です。村上春樹的なテイストも多分に感じられ、読後に余韻の残る恋愛小説に仕上がっています。高橋マリ子ちゃんの写真集に代表されるように本業のセンスばかりでなく、文才まで持ち合わせているなんてズルイですよね。
文筆家としては前掲誌が生んだ名著『ライド・ライド・ライド』という旅エッセイが先行していますが、「自分探しの旅」などという感傷的な気持ち悪い紀行文への強烈なアンチテーゼとして自らの男の欲望を赤裸々に綴った潔さから一転して、抑制のきいた静かな語り口で男女の機微を散文的に表現しています。二作目の『ドライブ』は未読ですが、作家としても注目すべき存在です。
寄贈してくれた先生に「なんでこの本を買ったんですか?」などとは到底訊けないけど、でも気になるな〜。
『クレーターと巨乳』 藤代冥砂著
スイッチ・パブリッシング 2007.2 9784884180287
情報館所蔵:3F一般書 913.6||F 66