グアテマラの弟
片桐はいりさんは名エッセイストです。知ってました?
私事で恐縮ですが、ミレニアムの明けた年に中南米を縦断旅行しました。ご存知のように一部の国を除いてほとんどがスペイン語圏となっています。僕の場合は北米から入って南下していったので、旅行を続ける上で会話に支障のないよう、できるだけ中米の北のほうの国で語学学校に入学しようと企図していました。
グアテマラという国にアンティグアという風光明媚でのんびりした古都があります。スペイン語をマスターしようとするバックパッカーにとっては語学学校のメッカでもあり、市街地にはあまたのスペイン語学校がひしめきあっています。そのなかにほぼ日本人御用達となっているATABALという学校があり、多くの日本人旅行者の例に漏れず、僕もそこでお世話になることになりました。なぜ日本人が集まるのかというとペトラさんという校長先生の旦那さんで、経営を取り仕切っている方が日本人だからです。物静かで包容力があり、とても誠実な方なので、その評判を伝聞してみな入学してくるのでしょう。名前を片桐真さんといいます。女優の片桐はいりさんの弟さんです。あれから8年近く経った今でも、メーリングリストでお便りをいただきます。過去に在籍した学生すべてにメールを送られるようなとても几帳面でイイ方です。
この本は姉のはいりさんが弟のマコトさんを頼ってグアテマラを訪れる旅行記となっています。嫁が図書館で借りてきたのを横から取り上げてパラパラと読んでいたら、当時の思い出が蘇ってきたのも手伝ってかページを繰る手が止まらなくなりました。文章が巧みだから読ませるのは言うまでもありません。「所詮タレント本だろ?」と軽くみていた自分の愚かな先入観を恥じ入りました。情感の抑制された端正な語り口が読後にしみじみとした余韻を残します。ほんとにびっくりするほどうまいんですから。食わず嫌いってダメですね。今度『陰日向に咲く』でも読んでみようかな。