『チューイングガム』 山田詠美
潔く、かっこよく、でも純粋に。
山田詠美が好き、と言うのは、自分の人には見せない部分を告白するようで少し恥ずかしいのだけれど、高校から大学にかけて、詠美さんの小説をそれこそ「読みあさる」ように読み、大きな影響を受けた。よしもとばななさんと山田詠美さんは私の青春時代の2大教祖。(これも恥ずかしい表現・・・。)
世の中は様々な価値観で溢れている。心をニュートラルにしてまっさらな目で人を、物ごとを見つめること。自分の信念を持つこと。純粋さを失わないこと。詠美さんがよく言うのは「何が恥ずかしいか」という感性の大切さ。一見、男女の色恋や性愛を描いているようで、人間の心の裏側や深層まで鋭くついている詠美さんの作品に、時には憧れの念を抱き、時には自分の中の醜い部分を突かれたような気持ちで深い絶望に襲われたものだ。
『チューイングガム』は人生の様々を乗り越えてたどり着いた穏やかな関係を描いた作品。歳を重ねるごとに汚れていく人生と、純粋になっていく人生、道は二つに分かれるように思う。何も知らない純粋さではなく、人間の醜さ、汚れを知り、それでも純粋であり続けようとする心。そんな二つの心が出会った時、素敵な恋愛が生まれる。詠美さんの他の作品とはちょっと色合いの違った、幸せな気持ちになれるストーリー。
社会人になり、なぜか詠美さんの作品からは卒業してしまった。また改めて色々と読んでみようかな。
(情報館所蔵)『チューイングガム』 文芸春秋,1991 (913.6 Y19 3F閲覧室)
山田詠美さんのその他の著作(独断によるselection)
『ジェシーの背骨』 河出書房新社,1986 (913.6 Y19 3F閲覧室)
『放課後の音符』 新潮社,1989 (913.6 Y19 3F閲覧室)
『トラッシュ』 文芸春秋,1991 (913.6 Y19 3F閲覧室)
『ぼくは勉強ができない』 新潮社,1993 (913.6 Y19 3F閲覧室)
『色彩の息子』 新潮社,1994 (913.6 Y19 新/文 3F文庫新書コーナー)
(Text:Booktree)