めがね
『かもめ食堂』で大ブレイクした荻上直子監督の最新作。与論島にある『Ku:nel』的な一軒宿を舞台に滞在客たちの食う寝る生活をだらだらと描いた作品。女性のやさしくみずみずしい感性が画面の端々にまで行き届いている。昔、東南アジアで過ごしたぐうたらなスローライフが思い起こされてほんのり幸福な気分にさせられる。
なんの娯楽もない南の島で何週間も沈没(バックパッカー用語で同一箇所に長期間滞在すること)しようと思えば、「たそがれる」という能力が必要だ。劇中でも言及されるように、おそらくこれは一種の才能で、誰にでも備わっている資質ではないのだろう。パスカルか誰かが「部屋の中にこもってじっと思索していられる奴がエラい」といっていたように記憶しているが、「たそがれ力」も精神的な成熟度を測るひとつの指標だと思う。この映画を観てあなたの「たそがれ力」を自問してみてください。
なお、『pen』8/15号(no.204)の「日本映画を面白くする、若手監督たち。」特集のなかで、荻上監督が採りあげられていますので、興味のある方はご一読を(『pen』は情報館でも定期購読しています)。
■『めがね』公式サイト http://www.megane-movie.com/
■京都シネマ(公開中)
http://www.kisaragisha.co.jp/kyotocinema/index.html
(text:情是)