第5回情報館レビューコンテスト 館長賞作品

                                                

  •   受賞者: 玉一祐樹美さん
  •   タイトル: 『ねじまき鳥クロニクル』
  •   著  者:   村上春樹
  •   所  在:   3F文庫新書コーナー 
  •   請求記号:913.6 || Mu 43 || 新/文

 

レビュータイトル: 「散文から運命の言葉と出会い、そして開く」

本を開いた日、僕は舐めた。
たいして何の変哲もない味したレモンドロップ。
世界のねじを巻いて回るねじまき鳥。
読む傍ら僕は耳を澄ませる。何も聞こえやしない。

物語は進み、僕は茹でる。
お話の男と同じスパゲッティ。10分間しっかり茹でて絡ませて。
男を取り巻く女、女、また女。時々髪の不自由な人、は松竹梅。
そして赤いビニール帽の女。
その日はやたらと赤いものに目が向いた。

最後のレモンドロップは最後のページをめくってから。
僕はとうとう気付いた。そのレモンドロップは、日常の世界と非日常の物語とを甘酸っぱく混ぜ合わせ溶かしていたことに。
すると僕の耳に届いた。
遠くでねじを巻くような鳥の声。
僕の時間をまたゆっくり不思議な方向に動かしてゆく。そう、これはそんな物語。
 

受賞者コメント
 
 僕はレビューは苦手です。みてもらえれば一目瞭然。文章よりも言葉で表現 それ即ち僕のスタンス。だから思ったこのレビューが出来たとき 「これは、落選か館長賞だな」 見事に良きほう、ありがたやありがたや。
 
作品の講評
 物語が読み手になげかけるのは、単なる意味ではない。言葉とイメージの絡み合いの中から、ある世界を、さもなくば、嘘であってもよい現実を感じてくれということだ。それを感じた読み手は、作者を離れつつも作者を胸に抱かざるをえない。このレヴューはそうした村上体験だと思う。 (島本先生)
 

 

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