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小林秀雄について

小林秀雄について

AMAZON: 小林秀雄について

今、小林秀雄が旬である。
小林秀雄は偉大な人、だと思う。しかし苦手なのである。わたしにとって、この偉人との出会いが大学受験必読書として、というのが不幸であった。手元に昭和46年発行
の新潮文庫『無常という事』がある。値段は140円。受験対策用として購入したもの
である。こんな小冊子であるに関わらず、どんな小断片も今は記憶に残っていない。
今、ブームででもあるのだろうか、書店では小林秀雄関係の本が目につく。

ということで齢50半ばにして件の小冊子を読み返している。高校生時分と違って、
「この文章は何を指しているのか?」とか「どの漢字が問題に出るのか?」などと
余分な(?)ことを考える不自由さから開放されているだけ、読み方に多少余裕が
ある。さすがに砂に水が染み込むがごとく、というわけにはいかないが、なんとなく
著者である小林秀雄の言おうとしていることが、わかったような気がする。
なるほど、と思ったりもする。このわかったような気分になること、なるほどと
頷けること、それ自体、自分なりに成長した証しだと、自画自讃をしているので
ある。少なくとも小林秀雄に対して前向きになっている自分がいる。素人の読書で
は、この思い込みは結構重要だと思っている。書評を生業とする専門家でもない限
り、普通の読書人は、その人達なりの本の読み方をして納得できれば、それで十分だ
と思う。テレビや新聞などで書評を扱ったコーナーがあり、仕事柄見たり読んだりも
する。へ〜、って感心すること頻りで確かに参考になるのだけれど、未読の本なんか
だったりすると、偉い(?)先生が語ったことがすべて正しい、という「思い込み」
の落とし穴にはまり込むこわさがあるので、鵜呑みにせず、こんな本の読み方もある
よ、という程度にしておきたい、と自分に言い聞かせている。

大学受験において今でも小林秀雄はメジャーな存在なのであろうか。たくさんの著作
があるなかでことさら『無常という事』だけを目の敵にするべきではないであろう
が、18歳の若者に「無常観」を理解しろ、というのは土台無理があるのではないか。
本には、それを読むに相応しい読者対象というものがあるのではないか。小林秀雄と
いう文芸批評家が読書人から敬遠される対象とならないためにも、そういったことを
良く考えて欲しい、などと思っている。

(text:bach憧憬)

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